うたかたの恋

ヨーロッパの名門ハプスブルグ家の皇太子ルドルフの自殺は、心中とか情死事件とかいわれ、とてもセンセーショナルな事件だったらしく、それはハプスブルグ家自体の自殺そのものになるのではないかとか、いろんな解釈ができるのかもしれません。ルドルフは30歳、その年1989年の秋には、遥か東の日本の国では、立太子礼が行なわれ、満10歳の皇太子が誕生しました。後の大正天皇です。大正天皇の時代の御心労については、東西に共通するものがあったのかどうか、よくわかりません。

オーストリアのルドルフ皇太子の事件についても、真相は謎なのですが、『うたかたの恋』などの物語や映画に脚色されました。

宝塚歌劇の「うたかたの恋」といえばやはり星組の紫苑ゆう、なのですが、稽古中の負傷もあり、復帰後の公演の録画DVDは発売されませんでした(代役麻路さき主演のみ発売)。それでも引退記念ビデオで一部の場面を見ることはできます。

その中で、将来のことを語ろうというルドルフ(紫苑)の言葉に、マリー(白城あやか)の答えた言葉が印象的でした。

 「あたくしには将来がそれほど大事なものとは思えませんわ」

それは「今が大事」という意味なのかもしれません。将来も大事だけれど、今にまさる将来もあれば、将来にまさる今の瞬間の奇跡もありえる、ともかくマリーが奇跡のような幸福の中にいたことは確かなのでしょう。

ルドルフは、マリーのその言葉を聞いて、何かの二者択一を迫られたように感じたのかもしれません。

・・・そのような印象をもったのは、二人のスターの、特に白城あやかの演技によるところが大きいかもしれません。